発行:国土交通省住宅局建築指導課建築物防災対策室
資料提供:(財)日本建築防災協会、(財)日本建築設備・昇降機センター

平成20 年4月1日から 建築基準法第12 条に基づく 「定期報告制度」が変わります

~見直しのポイント~

国土交通省

定期報告制度は、建築物や昇降機などの定期的な調査・検査の結果を報告することを所有者・管理者に義務づけることにより、建築物の安全性を確保することを目的としています。

定期報告は所有者・管理者に課された義務です。

建築基準法では、建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物(遊戯施設などの工作物を含みます。)の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない(第8条第1項)とされています。さらに、特定行政庁が指定する建築物(昇降機などの建築設備や遊戯施設などの工作物も含みます。)の所有者・管理者は、定期に、専門技術を有する資格者に調査・検査をさせ、その結果を特定行政庁に報告しなければなりません(法第12条第1項及び第3項)。

つまり、適切に維持管理するとともに、定期的な調査・検査の結果を特定行政庁に報告することは、所有者・管理者に課された義務であり、定期報告をすべきであるのにしなかったり、虚偽の報告を行った場合は、罰則の対象(百万円以下の罰金)となります。

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専門技術者による適切な調査・検査が重要です。

専門技術を有する資格者が調査・検査を適切に行わなければ、思わぬ事故につながり、社会的責任を問われる可能性があります。建築物の安全性を確保するためには、調査者・検査者が調査・検査を適切に行うとともに、所有者等に対して維持保全のアドバイスを行うことを心がけることが重要です。

近年、定期報告が適切に行われていなかったことが一因と思われる建築物や昇降機などの事故が多発していることから、定期報告制度を見直すこととなりました。

相次ぐ事故の発生

平成18年6月の東京都内の公共賃貸住宅のエレベーターにおける死亡事故、平成19年4月の東京都内の複合ビルのエレベーターにおける発煙事故、同年5月の大阪府内の遊園地のコースターにおける死亡事故、同年6月の東京都内の雑居ビルにおける広告板落下事故等、建築物や昇降機などに関する事故が相次ぎ発生し、この中には、建築物や昇降機などの安全性の確保にとって重要な日常の維持保全や定期報告が適切に行われていなかったことが事故の一因と見られるものがありました。

一方で、たとえば、遊戯施設の検査標準(JIS A1701)には、コースターの車輪軸について年1回以上の探傷試験が義務づけられていますが、建築基準法令上の位置づけがあいまいであるとの指摘がありました。

定期報告の調査・検査の項目、方法、判定基準を法令上明確にします。

定期調査・検査の項目、方法、是正の必要の要否の判定基準を、①特殊建築物等(劇場、映画館、病院、ホテル、共同住宅、学校、百貨店等で一定規模以上のもの)、②昇降機(エレベーター、エスカレーター及び小荷物専用昇降機)、③遊戯施設(コースター、観覧車、メリーゴーラウンド、ウォーターシュート、ウォータースライド等)及び④建築設備等(換気設備、排煙設備、非常用の照明装置、給水設備及び排水設備)について、それぞれ定めました。

調査・検査の結果の判定基準
要是正 修理や部品の交換等により是正することが必要な状態であり、所有者等に対して是正をうながすものであり、報告を受けた特定行政庁は、所有者等が速やかに是正する意志がない等の場合に必要に応じて是正状況の報告聴取や是正命令を行うこととなります。
要重点点検 次回の調査・検査までに「要是正」に至るおそれが高い状態であり、所有者等に対して日常の保守点検において重点的に点検するとともに、要是正の状態に至った場合は速やかに対応することをうながすものです。
指摘なし 要重点点検及び要是正に該当しないものです。
※なお、要是正及び要重点点検に該当しない場合にあっても、特記事項として注意をうながすこともあります。

(注)要重点点検は、昇降機及び遊戯施設の一部の検査項目にあります。

報告内容を充実します。
定期報告を受けた特定行政庁が適切な措置を講じやすくするため、昇降機と遊戯施設で同じ様式の報告書を用いることとなっていたものを分け調査・検査結果表の添付を義務づけるとともに、その中で検査項目ごとの担当調査・検査資格者や調査・検査を代表する立場の資格者を明確にすることとし、調査・検査の結果、「要是正」や「要重点点検」と判定された項目に対する改善策の具体的内容等、前回の調査・検査以降に発生した不具合について報告することとしました(閲覧対象となる概要書も同様)。

見直しのポイント

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建築基準法(昭和25年法律第201号)(抄)

(維持保全)

第8条 建築物の所有者、管理者又は占有者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するように努めなければならない。
2 第12条第1項に規定する建築物の所有者又は管理者は、その建築物の敷地、構造及び建築設備を常時適法な状態に維持するため、必要に応じ、その建築物の維持保全に関する準則又は計画を作成し、その他適切な措置を講じなければならない。この場合において、国土交通大臣は、当該準則又は計画の作成に関し必要な指針を定めることができる。

(報告、検査等)

第12条 第6条第1項第1号に掲げる建築物その他政令で定める建築物(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物を除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者(所有者と管理者が異なる場合においては、管理者。第3項において同じ。)は、当該建築物の敷地、構造及び建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者にその状況の調査(当該建築物の敷地及び構造についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含み、当該建築物の建築設備についての第3項の検査を除く。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。

2 国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第6条第1項第1号に掲げる建築物その他前項の政令で定める建築物に限る。)の管理者である国、都道府県若しくは市町村の機関の長又はその委任を受けた者(以下この章において「国の機関の長等」という。)は、当該建築物の敷地及び構造について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は同項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。

3 昇降機及び第6条第1項第1号に掲げる建築物その他第1項の政令で定める建築物の昇降機以外の建築設備(国、都道府県及び建築主事を置く市町村の建築物に設けるものを除く。)で特定行政庁が指定するものの所有者は、当該建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は国土交通大臣が定める資格を有する者に検査(当該建築設備についての損傷、腐食その他の劣化の状況の点検を含む。)をさせて、その結果を特定行政庁に報告しなければならない。
4 国の機関の長等は、国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物の昇降機及び国、都道府県又は建築主事を置く市町村の建築物(第6条第1項第1号に掲げる建築物その他第1項の政令で定める建築物に限る。)の昇降機以外の建築設備について、国土交通省令で定めるところにより、定期に、一級建築士若しくは二級建築士又は前項の資格を有する者に、損傷、腐食その他の劣化の状況の点検をさせなければならない。

5~8(略)